トンズランス菌とは|症状・感染経路・従来の水虫菌との違い

トンズランス菌は、格闘技やマット競技の現場で「マット菌」「新型水虫菌」とも呼ばれる皮膚真菌症の原因菌です。従来の水虫菌とは異なる特徴を持ち、感染すれば大会に出場できない可能性もあります。症状、感染経路、そして従来の菌との違いを整理します。

トンズランス菌とは

正式名称はトリコフィトン・トンズランス(Trichophyton tonsurans)といいます。白癬菌と呼ばれるカビの一種で、水虫の原因菌の仲間です。日本国内では2001年に確認された比較的新しい菌で、それ以前は見られませんでした。

20世紀に交通機関が発達したことで、北米、オーストラリア、アジアへと感染域が急速に拡大しました。日本へは競技者の往来を通じて持ち込まれたと考えられています。

主な症状

身体にできる赤い斑点
環状に広がることが多く、かゆみを伴います。手の甲や首まわりなど、露出している部分に現れやすくなります。
頭皮の異常・脱毛
頭部に感染すると、地肌が赤く腫れたり、部分的な脱毛が起こったりします。
かゆみ
感染部位にかゆみが生じますが、症状が軽く自覚しにくい場合もあります。

症状に気づいた場合は、自己判断せず皮膚科を受診してください。正しく理解して治療すれば、過度に恐れる必要のある病気ではありません。ただし放置すると、競技者本人だけでなく友人や家族にも感染が広がる可能性があります。

従来の水虫菌との違い①:上半身に感染しやすい

一般的な水虫は、白癬菌が足の裏などで繁殖し、皮がむけるといった症状を起こす病気です。感染部位は足が中心になります。

これに対してトンズランス菌は、足以外、とくに上半身に感染することが多いという特徴があります。頭部、顔、首、腕、体幹といった部位に症状が出ます。組み技の練習で相手と接触する部位と重なるため、格闘技の現場で問題になりやすいのです。

従来の水虫菌との違い②:感染力が強い

2つ目の特徴は、感染力が非常に強いことです。通常の水虫菌に比べ、角質への侵入速度が倍近く速いという研究結果が発表されています。

練習中に生じた擦り傷があれば、侵入はさらに容易になります。傷からの菌の侵入速度が他の菌にくらべ速いことも研究等で明らかになっており、擦り傷ができやすい競技ほどリスクが高まります。

感染経路

人から人への直接接触
練習中の組み合いで、感染者の皮膚から直接移ります。
マットを介した接触
道場のマットは汗などの水分で菌が増殖しやすい環境です。感染者が触れたマットに、次の選手が接触します。
更衣室・シャワー室の床
裸足で歩く動線は、施設内で菌が移動する経路になります。
共用備品
グローブ、ミット、防具など、複数人で使う用具も経路になり得ます。

感染経路が複数あるということは、対策も一箇所では足りないということです。マットだけを対策しても、更衣室の床を経由して菌が持ち込まれれば効果は限定的になります。

大会出場規定との関係

全日本柔道連盟主催大会をはじめ、多くの大会の出場規定にトンズランス感染者の出場可否に関する事項が明記されています。感染力が強いため、他の選手への二次感染を防ぐ目的です。

日々の努力の成果を大会で発揮できなくなる可能性があるということです。感染症についての取扱いに関しては、大会主催事務局などにお問い合わせください。

環境面の対策とその効果

個人の対策と並行して、練習環境そのものへの対策が必要です。一般財団法人 日本食品分析センターによる抗菌力試験(JIS Z 2801:2010準拠)では、トンズランス菌を接種した触媒加工片から24時間後に菌が検出されず、抗菌活性値4.2超が確認されています。

24時間後(触媒加工片)0.63未満 菌検出せず
24時間後(無加工片)1.3×10⁴ /mL
抗菌活性値4.2超

※本試験はポリエチレンフィルムを用いた試験片上での結果です。

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