日常のマット清掃では落ちない理由|拭き取りとアルコールの限界

毎日きちんとマットを拭いている。それでも感染が出る。こうした相談は珍しくありません。清掃が足りないわけでも、やり方が間違っているわけでもありません。マット清掃という手段には、構造的な限界があるためです。

清掃は「その時点」の対策

拭き取り清掃も消毒も、実施した瞬間の菌を減らす行為です。効果はその時点に限られます。清掃が終わった直後から、マットは無防備な状態に戻ります。

練習が始まれば、選手の身体から菌が持ち込まれます。汗が落ち、角質が剥がれ、体温でマット表面が温まる。清掃で一度リセットされた環境は、練習開始から時間をかけずに元の状態へ向かっていきます。

清掃と菌の関係

清掃直後 → 菌が減った状態

練習開始 → 選手から菌が持ち込まれる

練習中  → 汗・体温・角質で増殖条件が揃う

練習終了 → 次の清掃まで、菌はマット上に残る

アルコール消毒への過信

アルコール消毒は手軽で、多くの現場で採用されています。ただしアルコールも、揮発すれば効果は残りません。塗布した瞬間に作用し、乾いた後には防御機能が残らないためです。

また、広いマット面を隅々まで均一に処理し続けることは、日々の運用としては負担が大きくなります。時間の限られた練習前後に、道場全体を完全に処理し切ることは現実的ではありません。

汚れの蓄積が、洗浄そのものを妨げる

長く使われたマットには、汗と皮脂の汚れが層になって蓄積しています。表面を拭くだけでは、この層の内部までは届きません。

蓄積が進んだマットでは、日常清掃の効果そのものが限定的になります。においが取れない、拭いてもすぐ黒ずむといった状態は、蓄積が進んでいるサインです。この段階では、日常清掃とは別に、専門的な洗浄が必要になります。

洗浄+持続型コーティングという考え方

清掃の限界を補うのが、持続型の抗菌コーティングです。考え方はシンプルで、蓄積した汚れを洗浄で除去したうえで、菌が接触したときに作用し続ける層をマット表面に作る、というものです。

工程1:洗浄
汗と皮脂の蓄積を除去します。この工程を省くと、汚れの上にコーティングすることになり、抗菌性能が発揮されません。
工程2:触媒コーティング
プラチナコロイド・銀コロイド・酸化チタンを噴霧し、表面に抗菌層を形成します。菌が接触すると分解・不活性化します。

一般財団法人 日本食品分析センターによる抗菌力試験(JIS Z 2801:2010準拠)では、トンズランス菌を接種した触媒加工片から24時間後に菌が検出されず、抗菌活性値4.2超が確認されています。

※本試験はポリエチレンフィルムを用いた試験片上での結果です。

清掃をやめる話ではありません

誤解のないように申し添えると、コーティングは日常清掃の代わりになるものではありません。汗や汚れそのものを取り除く清掃は、これまでどおり必要です。

清掃が「持ち込まれたものを取り除く」対策であるのに対し、コーティングは「持ち込まれたものに作用し続ける」対策です。役割が異なるため、併用することで衛生水準が上がります。日々の清掃を続けながら、清掃と清掃のあいだの時間を守る仕組みを足す、と捉えていただくのが正確です。

効果を確認する仕組み

コーティングもまた、効果が目に見えるわけではありません。そこで施工時に施工前/施工直後の拭き取り検査を行い、菌がどれだけ減少したかを記録します。さらに1年後・2年後にも同様の検査を実施し、微生物研究所による培養試験の結果を報告します。

計3回の検査により、2年間にわたり抗菌力が持続していることを写真とデータで確認できます。「対策している」ではなく「この数値になっている」と示せることが、現場の判断材料になります。

JIS抗菌試験の結果を見る試験条件・培養写真・抗菌活性値の意味を解説します

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