エアコンを運転していないのに、客室の扉を開けた瞬間に臭いを感じる。
清掃を終えたばかりの部屋で、スタッフの方がそう気づかれることがあります。
この状態は、空調内部の汚れが一定以上に進んでいるサインです。本記事では、ホテル客室で多く採用されている「隠蔽型空調(天井埋込ダクト型)」に絞り、なぜこのタイプがカビの発生しやすい構造なのかを、現場でお預かりした客室の実例とあわせてご説明します。
プレスリリース2026年7月24日/PR TIMES

窓が開かない高層ホテルで「エアコンのカビ臭」相談が急増。株式会社HONU:施工体制を増強
客室で表面化する空調臭に対応するため、専門スタッフを増員し、空調本体から吹き出し口内部まで一体で施工する体制を強化しました。
まず、ホテルで使われる空調の種類を整理します
業務用空調にはいくつかの種類があり、設置場所や用途によって使い分けられています。ホテル客室で採用されるものを中心に、代表的な6つのタイプを一覧にまとめました。
\ 業務用空調の主なタイプ /
天井カセット型(4方向吹き出し)
ホテル・飲食店・オフィスで最も多いタイプ。天井面から4方向に送風します。本体の下面が客室から見えます。
天井カセット型(2方向吹き出し)
廊下や細長いスペースで多く使われます。左右2面から送風します。こちらも本体下面が見えます。
天井吊り下げ型(ビルトイン)
倉庫・工場・大型店舗で多く見られます。天井から吊り下げて設置し、本体が室内に露出しています。
壁掛け型(業務用パッケージ)
美容室や小規模店舗に多いタイプ。壁面の上部に設置し、本体が見えます。
本記事で扱うタイプ
天井埋込ダクト型(隠蔽型)
ホテル客室や高級店舗で採用されます。本体が天井裏に隠れており、客室からは吹き出し口・吸込口の「ガラリ」しか見えません。意匠性の高さから、上質な客室で広く選ばれています。
床置き型(パッケージ)
サーバー室・工場・大型施設の補助空調に多いタイプ。床に据え置いて設置します。
図解1:業務用空調の主なタイプと、本記事で扱う隠蔽型の位置づけ
各タイプの詳しい違いは、こちらのページにまとめています。
ホテルの業務用空調タイプ一覧を見る
隠蔽型は意匠性で選ばれますが、メンテナンス性は別の問題です
隠蔽型(天井埋込ダクト型)が客室に採用される主な理由は、意匠性の高さです。本体が天井裏に収まり、客室内には吹き出し口のガラリだけが見えるため、天井面がすっきりと納まります。上質な客室デザインとの相性が良いタイプです。
一方で、設置の段階でメンテナンスのしやすさまで考慮されているとは限りません。実際にお預かりした客室では、次のような状況が少なくありません。
・天井点検口から熱交換器までの距離が遠く、手が届きにくい
・天井裏の配管が障害になり、本体に十分にアクセスできない
・そもそも、清掃を前提とした点検口が設けられていない
こうした客室では、日常の清掃でガラリの表面を拭くことはできても、内部まで手を入れることが構造上難しくなります。

客室天井の点検口

点検口から本体までの距離があり、内部に手が届きにくい状態
点検口があっても、本体まで距離があり、配管が障害になる客室は少なくありません
隠蔽型にカビが発生しやすい理由
隠蔽型でカビが発生しやすい理由は、大きく2つに分けられます。「構造による理由」と「見えないことによる運用上の理由」です。
図解2|2つの側面から見た、カビ発生の理由
A.構造による理由
天井裏で冷気と暖気が混ざり、結露しやすい
本体が天井裏にあるため、温度差の生じる環境で結露が起きやすく、湿気が残りやすい状態になります。
熱交換器から吹き出し口までの蛇腹(フレキ)部分に汚れが残る
この区間は空気の通り道ですが、湿気と汚れが残りやすく、カビの発生しやすい箇所です。
蛇腹部分は、構造上、清掃がしにくい
点検口から遠く、配管も入り組んでいるため、内部まで清掃の手を入れにくい区間です。
B.見えないことによる運用上の理由
天井裏のため、目が行き届かない
本体が見えないため、汚れの進行に気づく機会がほとんどありません。
見えない箇所のため、予算の対象になりにくい
目に見える箇所が優先され、内部の洗浄は後回しになりやすい傾向があります。
蛇腹部分は、清掃の対象として意識されにくい
存在自体が見えないため、清掃すべき箇所として認識されないまま経過することがあります。
図解2:隠蔽型にカビが発生しやすい理由(構造・運用の両面)
これらが重なることで、隠蔽型は汚れが内部に蓄積しやすく、しかもその進行に気づきにくいタイプになります。
客室から確認できるのは、ガラリだけです
隠蔽型では、客室から見える空調の部分は、吹き出し口・吸込口のガラリだけです。本体も、蛇腹部分も、熱交換器も、すべて天井裏にあります。
下の写真は、実際にお預かりした客室のガラリです。客室から見た外観、ガラリを外した内部、そして内部に確認できた汚れの順にご覧ください。

① 客室から見たガラリの外観

② ガラリを外した内部

③ 内部に確認された汚れ(カビ)
外観からは分かりにくくても、内部に汚れが蓄積していることがあります
確認のポイント
ガラリの表面にカビや汚れが確認できる場合、内部の熱交換器や蛇腹部分には、それ以上の汚れが蓄積していると考えられます。ガラリは、客室から確認できる数少ない部分です。清掃スタッフの方がガラリの汚れに気づかれた際は、内部の状態を確認する目安になります。
冒頭でお伝えした「エアコンを運転していないのに、扉を開けた瞬間に臭う」という状態は、内部の汚れが進んだ客室で実際に起こります。送風していなくても、天井裏に蓄積した汚れや湿気から臭いが客室に降りてくるためです。この段階になると、ガラリの表面清掃だけでは臭いは解消しません。

分解洗浄を終えた後の内部
内部まで洗浄することで、汚れと臭いの発生源に対処できます
まとめ|隠蔽型は、内部まで含めた洗浄が必要です
隠蔽型空調(天井埋込ダクト型)は、意匠性の高さから客室に広く採用されている一方で、構造上、内部にカビや汚れが蓄積しやすく、その進行に気づきにくいタイプです。客室から見えるガラリはごく一部であり、臭いが表面化したときには、内部の洗浄が必要な状態になっていることが少なくありません。
当社では、ガラリの内部から蛇腹部分、熱交換器を含む空調本体まで、天井裏の空気の通り道全体を対象に分解洗浄を行っています。隠蔽型の構造に対応した施工の範囲や流れについては、下記のページにまとめています。
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本記事は、現場で施工を担当している責任者が執筆しています。個別の客室の状況についてのご相談は、お問い合わせフォームよりお気軽にお寄せください。