「フィルター清掃はきちんとやっている。それでも、客室の空調が臭う」
そうしたご相談をいただくことがあります。
フィルター清掃は、多くのホテルで定期的に行われています。それでも臭いが出るのは、フィルターの奥にある部分に手が届いていないためです。本記事では、隠蔽型空調(天井埋込ダクト型)の洗浄について、フィルター清掃と分解洗浄の違い、そして望ましい頻度を、現場責任者の立場からご説明します。
プレスリリース2026年7月24日/PR TIMES

窓が開かない高層ホテルで「エアコンのカビ臭」相談が急増。株式会社HONU:施工体制を増強
客室で表面化する空調臭に対応するため、専門スタッフを増員し、空調本体から吹き出し口内部まで一体で施工する体制を強化しました。
フィルター清掃は、すでに行われています
多くのホテルでは、ビルメンテナンス会社とのメンテナンス契約に、空調フィルターの清掃が必須項目として含まれています。つまり、フィルター清掃そのものは、すでに定期的に実施されています。
ここで確認しておきたいのが、その頻度です。契約内容としては、3ヶ月に1度の清掃が多く見られます。一般的な環境ではこの頻度でも対応できますが、窓が開かない高気密なホテルでは、空気の逃げ道がないためフィルターの埃詰まりが早く進みます。その結果、空気が澱み、異臭の原因になることがあります。こうしたホテルでは、フィルター清掃は本来、月に1度は必要だと考えています。
フィルター清掃と分解洗浄は、別のものです
フィルター清掃を続けていても空調が臭う場合、その原因はフィルターより奥にあります。フィルターは、空気の入り口にある網です。その奥には、送風ファン、熱交換器、蛇腹(フレキ)部分、ガラリの内部があります。フィルター清掃では、これらの部分には手が届きません。
つまり、空調のメンテナンスは、次の2つの層に分けて考える必要があります。
図解1|空調メンテナンスの2つの層
層1|フィルター清掃
| 対象 空気の入り口にあるフィルター(網) | 望ましい頻度 高気密ホテルは月1回 (ビルメン契約は3ヶ月に1度が多い) |
日常のメンテナンスとして欠かせません。ただし、これだけでは奥の汚れには届きません。
= フィルターの奥は、別の洗浄が必要です =
層2|分解洗浄
| 対象 送風ファン・熱交換器・蛇腹部分・ガラリ内部 | 望ましい頻度 最低2年に1度 |
本体を分解して、内部まで洗浄します。臭いの原因となる汚れやカビは、この層に蓄積します。
図解1:フィルター清掃(層1)と分解洗浄(層2)は、対象も頻度も異なります
フィルター清掃は、この2つの層のうち、層1にあたります。層2にあたる分解洗浄は、フィルター清掃とは別に行う必要があります。
分解洗浄は、最低2年に1度を目安に
分解洗浄の頻度について、当社では最低2年に1度を目安としてお伝えしています。内部の汚れの進み方を考えると、本来は1年に1度が理想です。ただし、分解洗浄はこれまで定期的な支出として計上されてこなかった費用でもあり、毎年の実施はホテルの予算にとって負担が大きいのが実情です。そこで、現実的に続けていただける頻度として、最低2年に1度をお勧めしています。
客室数の多いホテルでは、一度に全室を行うのではなく、1フロアずつ、あるいは2フロアずつと分けて計画する方法もあります。年度ごとの予算に合わせて、無理のない形で進めることができます。
分解洗浄をせずに放置すると、どうなるか
層2の分解洗浄を行わないまま年数が経つと、送風ファンや熱交換器に汚れが蓄積していきます。この汚れは、臭いだけでなく、風量と電力、そして機器の寿命に影響します。実際に起こる変化を、順を追ってご説明します。
図解2|風量の低下と、その先に起こること
吹き出し口の風速の変化(実測の一例)
新品時(洗浄された状態)
2.0m/s
設計どおりの風量
汚れが蓄積した状態
0.2m/s
およそ10分の1まで低下
吹き出し口の風速が新品時の2.0m/s前後から0.2m/s程度まで落ちることがあります。ここで問題になるのは、風量が落ちても、モーターは止まらないという点です。
図解2:汚れの蓄積による風速の低下(実測の一例)

分解洗浄後の吹き出し口で風速計を当てたところ。2.0m/sを示しています
当社では、施工前後の風速を風速計で計測し、変化を数値で確認しています
図解3|放置した場合に起こることの流れ
送風ファン・熱交換器に汚れが蓄積する
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風量が落ちる(風速2.0m/s → 0.2m/s)
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それでも風量を出そうと、モーターがフル回転を続ける
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電力消費が増え、電気代が上がる
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モーターに負荷がかかり続け、焦げたような臭いが出る
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モーターの交換が必要になる
図解3:分解洗浄を先送りした場合に起こる流れ
焦げたような臭いは、タバコ臭と受け取られることもあります。原因が空調のモーターにある場合、いくら客室の消臭を行っても解決しません。そして、この段階まで進むと、モーターの交換という費用が発生します。分解洗浄を先送りするほど、後の出費が大きくなる可能性があります。
まとめ|フィルター清掃に、2年に1度の分解洗浄を
フィルター清掃は、日常のメンテナンスとして欠かせません。そのうえで、フィルターの奥にある送風ファンや熱交換器の汚れには、分解洗浄で対応する必要があります。この2つは、対象も頻度も異なる、別のメンテナンスです。
分解洗浄は、最低2年に1度を目安に計画されることをお勧めします。これは、臭いへの対策であると同時に、電気代の抑制と、モーターをはじめとする機器を守るための予防でもあります。客室数に応じてフロアごとに分けるなど、予算に合わせた進め方もご提案できます。隠蔽型空調の分解洗浄について、施工の範囲や流れは、下記のページにまとめています。
本記事は、現場で施工を担当している責任者が執筆しています。個別の客室の状況についてのご相談は、お問い合わせフォームよりお気軽にお寄せください。